〜第8回 図書館サポートフォーラム賞受賞〜

高橋 晴子 氏

(大阪樟蔭女子大学助教授)

【国立民族学博物館 服飾・身装文化データベース】
【受賞理由】
服飾・身装関係の資料収集、データベース化から始まり、民博などでの共同研究を踏まえた「身装概念コード、分類コード」の開発、更に最近の新聞小説挿絵、雑誌掲載写真等画像資料の批判的読み取りまで、常に新しい課題に挑みつつ学問研究とドキュメンテーションとの融合を目指し、著作物、雑誌編集等を通じてその成果の普及に努めてきた功績。
【受賞のことば】
事務局の方で資料を作ってくださっていますので、私の資料と、論文の抜き刷りをご覧いただければと思います。

先ほど松岡さんが神戸出身だとおっしゃっていて、私も神戸出身ですので、とても嬉しかったのですが、私も大倉山図書館には思い出がございます。あんまりいい思い出ではございませんが。あの図書館ではレファレンスのテレフォンサービスがあるということを、私は何だか小さな頃から知っておりまして、電話をしたことがございます。「日韓問題について教えてください」と言ったのですね。そうしましたらレファレンサーの方が、「そういうことはお答えできません」とおっしゃいました。私は通信教育で司書課程をとりましたけれども、そこでまたそのことを思い出しました。どうしてあの時「日韓問題について知りたいのなら、こういう資料を見なさい」という回答をしてくれなかったのかと疑問に思いました。それと、中之島図書館である大阪府立図書館、この二つがだいたい私の経験した図書館でした。

大学を出まして、ひょんなことから、私は、服装――今は「身体と装い」ということで、もう少し範囲を広げて考えていますけれど――、そういう主題と出会いました。そしてパリの国立図書館、それとブリティッシュライブラリーを経験いたしました。そこでは、先ほど井上先生がおっしゃいましたように、何があるか、どこにあるかということが、徹底的に索引されていたのです。ものすごいカルチャーショックでした。日本の図書館の暗さに比べて、非常に重みのある、尚且つ素敵なライブラリアンがたくさんいました。そして分類ではなくて、徹底的に索引していることに対してカルチャーショックを受けたのです。ここで私と図書館というものが初めて結びついたのです。索引というのはこれだけの力があるのだということを、身をもって体験したのです。

そして帰ってきまして、またひょんなことで大阪樟蔭女子大学に勤務することになり、ここに衣料情報室という、情報センター、とまでは言いませんけれど、情報サービスをするところを作りました。ここでは服装の情報サービスを、内部の学生、あるいは外部の方、マスコミの方等問わず、皆さんにとにかくサービスをするという形で、やってまいりました。

それで私、ドキュメンテーションをやっていながら大変申し訳ないのですが、お手元の論文中の抜き刷りのどこにも「大阪樟蔭女子大学」と書いていないのです。今回表紙だけを作り直して、副題に大阪樟蔭女子大学を入れてもらいました。中はただ衣料情報室だけになっておりますが、これは大阪樟蔭女子大学の衣料情報室ということです。私の二十四年間の情報サービスの歴史を書いておりますので、またご覧下さい。

私の原点はやはりここなのです。外国の図書館の索引システムにカルチャーショックを受けて、そして原点は衣料情報室。そこから今の仕事へと移っていくわけなのですが、ちょっと資料をご覧頂けたらと思います。この衣料情報室の時代に、日外アソシエーツから次のような服飾文献目録関連のものを四冊出していただきました。これらは、服装の抄録・索引誌『衣料情報レビュー』の累積版にあたります。また、これを基に致しまして、現在データベースを作成しております。国立民族学博物館の方々、そしてそれ以外の方々、合計七人の方々とチームを組みまして、MCDプロジェクトというものを作っております。このMCDプロジェクトでは、「身装――身体と装い」のデータベースを作っております。現在、〈服装・身装文化データベース〉にはデータベースが五本、そして〈アクセサリー・身装文化デジタルアーカイブ〉を入れて合計六本、公開しております。

そこには文献データベースと、二本の画像データベースがあるのですけれど、その画像の方に、私自身はだんだんと移ってきております。そして私自身は、現在、近代日本の身体と装いの画像データベースを作りたいと思っております。その基になりましたのが、先ほど井上先生がご紹介下さった『近代日本の身装文化―「身体と装い」の文化受容』という著書なのですが、あれは、学位論文がベースとなっています。学位論文は『「身装」画像にみる近代日本の文化変容――データベース化のための基礎研究』というタイトルです。学位論文のほうはデータベースを構築するという観点から近代日本の身体と装いを見た、そして著書の方は文化論の観点から近代日本の身装文化を述べた、ということなのです。

また『美人』、近代日本の『美しい人』もテーマのひとつです。その当時の人はどういう人が憧れであったか、またどういう人をその当時の人は美しいと感じたか。身体と装いの主題では、やはり人が美しくなるということは避けては通れない問題だと思います。でも男性がやる場合、やはり避けるのですね。怖い、と(笑)。言ってはいけないというような・・・・・・。ですから女性の私だったらこの辺りも踏み込めるのではないか、ということで、学位論文ができましたあと、近代日本の美人データベースという構想を『朝日新聞』を紹介していただきました。

著書ができました後、お手元の二つの書評が出たのですが、もうひとつご紹介したい書評があります。実は今日、私と平井紀子さんが接戦だったと言うことをうかがって、本当に勿体無いような気持ちでおります。と言いますのは服装のライブラリアンでいらっしゃる平井さんは私の師匠なのです。彼女に倣って来たのです。ですから本当は彼女が先に受賞なさらないといけないのに、本当にありがとうございましたとしか申しようがありません。また、アート・ドキュメンテーション学会で、私が幹事長をやりまして、平井さんに幹事をやっていただいているのですが、そこで『アート・ドキュメンテーション通信』というものを出しております。そこに平井さんが今度、書評を書いてくださっている。まだゲラの状態でお渡しできなかったのですが、さすがにそこには私がデータベースと文化論の間で非常に悩んだことをきちっと捉えて書評して下さっているということをありがたく思っております。平井さん、本当にありがとうございました。

それから表彰状なのですが、こんなに素晴らしい表彰状、と吃驚いたしました。実は今ここにいらっしゃる末吉さんにも、アート・ドキュメンテーション学会の監事をしていただいております。アート・ドキュメンテーション学会でも表彰をしなさいとアドバイスいただき、来年からやろうと思っているのです。いただいた表彰状の楯を見まして、やはりこのくらいのものをいただくと、他の方に見ていただきたいというか、こんなに素敵なものをいただけるのは嬉しいことだなというのが実感できました。ただこれを作るのは大変お金がおかかりになったかと・・・・・・(笑)。アート・ドキュメンテーション学会では三人を表彰するのは無理だろうから、毎年二人くらいにしないといけないかな、などと考えておりました。これを見習ってアート・ドキュメンテーション学会でも素晴らしい表彰と、それからこの式典のアットホームなムードも、ぜひ私どものやっております学会に生かさせていただきたいと思います。

最後に、先ほど社会性のある図書館ということを末吉さんがおっしゃいましたが、私もこれからは社会性のあるデータベースということをもっと心に刻んで、データベースを作っていきたいと思います。本日はありがとうございました。


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