表彰講評 水谷長志 氏(表彰委員会委員長)


 図書館サポートフォーラム表彰委員長をしております東京国立近代美術館の水谷と申します。よろしくお願いいたします。

 早速ですが、第16回図書館サポートフォーラム賞の表彰結果についてご報告いたします。

 今回は、図書館サポートフォーラムの会員および事務局の推薦により、いずれも個人、9名の方が表彰候補となりました。

 この数は昨年の6件よりも多い推薦でありまして、今年もまた、いずれの方についても、図書館員および図書館の外から図書館をサポートされ、図書館活動を推進するお仕事をされていて、いずれも高い業績と評価をすでにお持ちの方々でありました。

 選考は3月17日、大森の日外アソシエーツにおいて12名の出席幹事による投票および4名の不在幹事の通信投票によることとなりました。実はこの出席幹事のお一人が被推薦者でありましたため、本会の監事をお引き受けいただいている太田泰弘様がその被推薦者であるのですが、いささかの議論の末、投票の透明性などを担保するために、太田様ご自身のご投票は、今回に限ってはご辞退していただくことになりました。

 出席・不在のあわせて15名の幹事による投票が行われ、その結果、この度の第16回図書館サポートフォーラム賞は栗田明子様、堀内佳美(よしみ)様、太田泰弘様のお三人様が受賞されることになりました。

 では、順に第16回図書館サポートフォーラム賞の表彰理由について述べさせていだきます。


 まず、栗田明子様(鞄本著作権輸出センター(JFC)相談役)の表彰理由を読み上げます。


 明治以来日本は、文芸においては大変な輸入超過大国である。日本人の著作が海外の出版社に紹介されて、翻訳され、海外の図書館に入り、そして多様な国民に読まれ、理解されることも念頭に、栗田氏は日本の著作権輸出という困難に果敢に取り組んだまさにパイオニアである。その著書『海の向こうに本を届ける著作権輸出への道』(晶文社、2011)は、まるで出版界の「兼高かおる世界の旅」のように刺激的であり、エンカレッジングな記録であり、またチャーミングな自伝的著作である。栗田氏による、著作権輸出の仕事は、出版ビジネスを世界的にし、そして図書館の棚を国の内外において広く豊かにした。その功績は、図書館サポートフォーラム賞にふさわしいものであり、評価し表彰するものである。


 2年前、2012年1月15日の朝日新聞の「著者に会いたい」に『海の向こうに本を届ける』の著者として栗田様が「「出版は志」の言葉を胸に」と題されてお写真とともに掲載されておりました。早速、ご著書を買いに走ったのですが、栗田様のお名前と日本著作権輸出センターおよびご同士であった板東悠美子さん(日本国際児童図書評議会(JBBY)会長)とは、実は、筑波にあった図書館情報大学において、私が学生であった、遥か昔の30年前に遭遇していたのでした。

 それは、1984年5月13日の同じ朝日新聞の「ひと」の欄でした。「日本著作権輸出センターを発足させた板東悠美子さん」という記事に強い感銘を受けたからであります。1984年の夏には、当時、四谷にあった国際交流基金の図書室で図書館実習の予定が入っていましたので、著作権輸出というお仕事に殊更に強い印象があったのでしょう。

 さて、「兼高かおる世界の旅」のような『海の向こうに本を届ける』を楽しく拝読して、さらに栗田様のお仕事について調べましたら、この本の前に国土社から「青春ノート」の第10番目として、『ゆめの宝石箱』が1986年に書かれていたこと、そして、おそらくは栗田さんをモデルに小説家の小川洋子さんが、『ミーナの行進』を2006年に出されて、第42回谷崎潤一郎賞を受賞されたことを知りました。そして『海の向こうに本を届ける』の帯には、小川洋子さんは、「日本文学を海外へ導いたのは、海図のない航海へ出た栗田さんの熱意だった」と書いているのです。著作権輸出というお仕事が、単にライツ・マネージメントのビジネスを越えて、はるかに深い連帯を栗田さんは著者との間に築かれていることに、あらためて感銘いたしました。そのようなお仕事が、いかに日本と海外の図書館の棚を豊かにしたかを思いながら、図書館サポートフォーラム賞をお受けいただき、選考委員の一人として深い感謝の念を覚えるのであります。


 次いで、堀内佳美様(アークどこでも本読み隊代表)の表彰理由を読み上げます。


 堀内氏は全盲にもかかわらず、2010年よりタイに暮らしながら、「アークどこでも本読み隊」を立ち上げた。読書の機会が少ない子どもたちに読書会を開く移動図書館の活動を続けて、2013年11月にはコミュニティ図書館もオープンさせた。タイ国内には70以上の少数民族や1,000万人以上の障害者がおり、その多くは学校や図書館の施設が少ない農村部に暮らしている。そのような環境の中、「本は世界の窓」をキャッチフレーズに、自らのハンデキャップをものともせず、子どもたちに本や物語を届け、読書や学習の機会を現地のタイ人スタッフとともに展開している。「アークどこでも本読み隊」の運営は、海外における読書推進活動のよきモデルを実践・提示していると言えよう。今後の継続発展への期待をこめつつ、その国際性と行動力を高く評価し表彰するものである。


 私自身は、堀内様とアークどこでも本読み隊のご活動は、寡聞にして存じませんでした。今回の推薦と関連資料、そして「アークどこでも本読み隊・堀内佳美応援ブログ」(http://blog.canpan.info/arc-yoshimi/)をあらためて拝見して、なんという勇気と行動力とそしてユーモアのセンスのある若き女性がいたものか、と感嘆いたしました。

 ブログのトップには次のような、大文字で並ぶ堀内さんのメッセージが並んでいます。

・「本は世界の窓」
・“知りたーい!もっとみてみたい!うん、いってみよう!!”
・「機会は平等でなくっちゃ!! 」
・「子どもたちのスイッチON! 」
・旅は今タイで始まったばかりです。
・キャラバンと夢を!!

 このようなメッセージを振り撒かれつつ、これから、さらに「本」と「図書館」の新しい可能性を切り開かれんことを、あらためて願うものであります。

 本日は堀内様ご自身のご出席はかないませんでしたが、ブログを始めさまざまに堀内さんをサポートされている岡村亜矢子さんが代理出席してくださいました。加えて堀内さんご自身のビデオレターが届いているということですので、楽しみに拝見したいと思います。


 最後に太田泰弘様(元・味の素食の文化センター主任研究員/前・文教大学教授)の表彰理由を読み上げます。


 太田氏は味の素食の文化センター主任研究員として在職中から約30年に亘り調査研究した成果を『日本食文化図書目録 江戸〜近代』(日外アソシエーツ、2008)として刊行した。本書はわが国の江戸時代以降の食文化に関わる6,300件の図書の解題書誌であり、570頁に及ぶ類書の無い大著労作である。2013年に和食は世界遺産としてユネスコに登録され、本書の価値はますます高まるに違いない。加えて文教大学国際学部教授、情報知識学会専門用語研究部会長、日本ドクメンテーション協会(現:情報科学技術協会)理事等歴任の他、神奈川県資料室研究会など企業間ネットワークの設立に尽力されるなど、多岐にわたる氏の功績を評価し表彰するものである。


 図書館、とりわけ専門図書館やドキュメンテーションに関わる人で太田様のお名前とご業績に触れたことの無い方は皆無でありましょう。図書館サポートフォーラムにおいては、皿の字の監事をお引き受けいただいておりまして、フォーラムが続いているのも太田様のご献身に拠るところが大であります。

 冒頭お話しましたように、そのフォーラムの監事をフォーラム賞の受賞者として選考することにはいささかの躊躇があったのは、事実であります。躊躇というのは正確ではないかもしれません。太田様のご業績に対しては、本フォーラムが、11回、2009年において、図書館サポートフォーラム賞特別表彰を末吉哲郎様(前・図書館サポートフォーラム代表幹事)にお贈りしたのと同じが良いのではないか、という議論もあったのでした。

 しかしながら、太田様の『日本食文化図書目録 江戸〜近代』に代表される、食の文化へのドキュメンテーション、食のドキュメンタリストとしてのご実績こそ、真率にフォーラムが評価するべきであることを選考会は思い直し、本日の結果となりました。

 私自身は、太田様の知見の広さを、一昨年の金沢大友楼の古都金沢の食のアーカイブ、ならびに昨年の西尾市岩瀬文庫の見学会にご一緒させていただいたことにより、何よりも忘れがたく、有難い体験を授かったことに、あらためてお礼申し上げたいと存じます。ぜひまた、太田様のプランニングで食のアーカイブ探訪の旅へと連れて行ってくだされば幸いです。


 第16回を迎える図書館サポートフォーラム賞も、この賞の三つの柱にかなって、長年の研鑽と国際性、そして図書館のあることの意義の発露顕現をよく示すお三方に授賞いただき、選考委員長として、ことのほか嬉しく思っております。

 以上をもちまして、簡単ではございますが、今回の図書館サポートフォーラム賞の表彰者のご紹介とさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。


 栗田様お祝いの言葉


 本日、サポートフォーラム賞の受賞式において表彰委員長の立場から栗田様の表彰理由を述べた中で、1984年5月13日の朝日新聞「ひと」の欄のことに触れました。私はその時は、二度目の春を筑波の図書館情報大学で迎えたところでした。

 同時に、筑波での2年間は、図書館実習に国際交流基金図書館を選んだほどに、私の人生の前後にはまったく無いほどに、高い海外志向が募っていた頃でした。ですので、この日本著作権センターを発足させた板東さん、栗田さん、そして著作権輸出というお仕事のあることに強烈な印象を持ったことを記憶しております。

 海外志向はなお抱きつつも国立大学図書館員の採用試験をなんとか通り、結果としてはなぜか国立大学には行かないで、竹橋の国立近代美術館に採用され、来年なんと30年目を迎えます。

 1984年の朝日新聞の「ひと」の欄が、なぜかずうっと、およそ30年間も、私の頭から離れませんでした。その間、「出版ニュース」ほかで日本著作権輸出センターと栗田様のお仕事とお名前は拝見していたのですが、ようやくこの図書館サポートフォーラム賞の授賞式という場で、かつての憧れの、栗田様そして板東様という、お二人の女性とこのような形でお会いできて、お二人にはさまれて、いま立っていることの不思議と幸せに、ただただ感激しております。人生待つということも大事で良いものですね。

 以上、まことに極めて私的な言葉の数々ですが、これにて栗田様の受賞のお祝いの言葉に代えさせていただきます。