日外アソシエーツ
技術革新の歴史・構造・未来を考察
技術革新はどう行われてきたか―新しい価値創造に向けて
日外選書 Fontana
著 者: 馬渕浩一〔著〕 技術革新はどう行われてきたか―新しい価値創造に向けて
定 価: 本体3619円+税
刊行年月: 2008年2月
ISBN: 978-4-8169-2094-3
判型・頁数: A5判・260頁
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目次 PDF 996KB
本文(抜粋) PDF 1367KB
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内 容: 「蓄積なくして技術革新なし」――製鉄、機械、土木など、わが国の技術史研究の成果を基に、過去の蓄積がイノベーションの“カギ”であることを論究。技術革新の歴史を徹底検証し、21世紀の方向性を探る、著者の意欲作です。
略歴:
馬渕 浩一(まぶち・こういち)
1957年名古屋市生まれ。名古屋市科学館主任学芸員。産業考古学会評議員。
名古屋工業大学大学院博士課程修了、工学博士。技術史・産業技術イノベーション、産業遺産などを研究。

<著書>
「IT時代の産業技術博物館構想―技術の保存継承が拓く21世紀のモノづくり」(玉川大学出版部 2001年2月刊)
「日本の近代技術はこうして生まれた―産業遺産をヒントに考える」(玉川大学出版部 1999年11月刊)など。

刊行に
あたって:

 本書は技術史の視点から技術革新を考察しようとするものである。
  最近のわが国の経済は、失われた10年などと称される長期低迷から抜け出し、景気回復基調を継続している。しかし、中長期的には、人口の減少、少子高齢化、国際競争の激化、環境問題の顕在化などの課題が山積していることは否定できない。これらの諸問題を克服し、経済成長を持続させるにはイノベーションの成否にかかっているといわれている。
  イノベーションは、新しい革新的な技術の開発だけを意味するのではなく、規制緩和や社会制度改革を進め、新しいサービスの創出によって社会システムを大きく変革する意味も含まれている。しかし、GDP約500兆円のおよそ20パーセントを製造業に依存するわが国において、不断の研究開発によって技術革新を継続しなければ将来の発展は期待できない。また、大量生産、大量消費を基とする従来型技術ではなく循環型社会構築に寄与する新しい技術の開発も喫緊の課題である。このような観点に立ち、本書は、狭義のイノベーションといえる技術革新をテーマとする。
  著者の研究テーマは技術史である。常々、技術史の研究成果は技術革新の研究に貢献するところが大きいと考えてきた。ステレオタイプの成功物語や偉人伝とは一線を画し、技術革新の要因を歴史的に検証する客観性を担保するのは、技術革新以前の段階を正確に評価するとともに、何が作用してどの水準にまで技術が高められたのかを分析することにあると思う。
  多くの技術革新事例を検証すると、実に多様な革新形態があり、そのような多様性の中から単純な法則を導くことは困難である。しかし、確実にいえることは、技術革新は決してゼロから起きないということである。技術革新を引き起こすためには、それ相応の科学や技術の蓄積があって初めて実現する。その蓄積を分析することは、技術の過去に遡ることに他ならない。その研究成果は、将来の技術革新を企図する場合の有益な知見となるであろう。ここに技術史の視点で技術革新を論ずる蓋然性が認められる。
  そこで本書は、過去から現在までの技術革新事例を分析することによって、技術革新の歴史的文脈を理解するとともに、その構造の考察を行う。これによって、将来の技術革新の手がかりを得ることを試みる。
  第一章では、技術革新の文脈を考察する。まず序論において、欧米における産業技術形成の略史を示し、研究開発手法の変化と経済的、文化的背景を読み解く。政府や大学の果した役割も注視する。そして、明治初年のわが国における欧米技術の受容と産業基盤形成、その後の技術革新の歴史的文脈を抽出する。
  明治初年の技術移転は産業技術形成の起点としての意味を持つだけではない。明治初年、近代技術が導入され定着していく過程で多くの在来技術が接ぎ木役を担った。明治の技術導入とその後の発展は一見すると不連続なようで実は連続的である。過去の蓄積が重要な役割を果たしたと断言できる。蓄積の上に新しい技術を積み重ね、発展させたという視点に立つなら、明治初年の技術移転研究は今日の技術革新研究と重なる
点が多い。
  第二章では、技術革新の構造を考察する。技術は科学の知見と結びついて発展することが少なくない。画期的な技術革新ほど科学知見との結びつきが看過できない。科学と技術、過去の蓄積と新しい知見がどのように作用して技術革新を引き起こしたのかを議論する。
  さらに、技術革新のゴールに到達するために、元々所有していた技術と不足する技術を組み合わせる作業が行われる。競争優位を確保しつつ行われる知識調達の概念の重要性を演繹したい。
  第三章では、技術革新の新しい方向性について考察する。これまで経済合理性を最優先に技術革新が行われてきた。しかし、地球環境問題が無視できぬほどに顕在化しており、生産と消費を最大化する大量生産型の技術をこれ以上拡大することは困難である。循環型社会構築に寄与する技術革新が強く求められてくるのは必然である。持続的発展を実現するには、わが国の過去の技術が重要な役割を果たす可能性を示す。
  技術革新はストックの上に成立している。ストックは技術蓄積であり、知識調達によって起きる新価値創造が技術革新である。19世紀から20世紀にかけて、わが国は欧米が蓄積した科学技術を産業化して繁栄してきた。しかし、21世紀は、わが国がこれまで蓄積した技術を商品化する時代である。そのためのヒントは歴史の中に見出すことができる。このメッセージを本書から読み取っていただければ幸いである。
  なお、本書では、年代と文献引用に関し、次のように表記することとした。
  年代については、日本の事項には西暦と和暦を併記し、欧米の事項は西暦のみ表記した。古い文書、文献から引用する場合、漢字は常用漢字に直した。カナは原文のまま引用した場合はカタカナ、口語訳した場合はひらがなとした。
  本書執筆の動機付けとなった名古屋工業大学での講義の機会を与えていただいた同大学大学院産業戦略工学専攻・堀越哲美教授、有益な助言をいただいた同・小竹暢隆准教授、ならびに本書の出版に格別のご配慮頂いた日外アソシエーツ株式会社・朝日崇氏に厚くお礼申し上げる。

2007年10月
馬淵 浩一
   


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