日外アソシエーツ
日本のアーカイブは、今―「公文書管理法」制定を見据えて
アーカイブへのアクセス―日本の経験、アメリカの経験
最前線で活躍する日米アーキビストら19名の最新報告集
著 者: 小川千代子・小出いずみ〔編〕 アーカイブへのアクセス―日本の経験、アメリカの経験
定 価: 本体3,800円+税
刊行年月: 2008年9月
ISBN: 978-4-8169-2136-0
判型・頁数: A5判・320頁
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内 容: 公開フォーラム「日米アーカイブセミナー 歴史資料へのアクセス:日本の経験、アメリカの経験」(2007年5月9日〜11日)で発表された、日米アーキビスト19名による最新報告。日本政府が最重要施策の一つに公文書館の整備拡充を置く今、アーカイブの公共性と、利用者の資料へのアクセスの確保を、日米両国の経験を踏まえて提言。「事項名索引」付き。
編者略歴:
小川 千代子(おがわ・ちよこ)
CA 国際資料研究所代表
東京都立大学人文学部卒業。東京大学百年史編集室に1975年から12年間勤務。この間アーカイブ資料の管理に関心を抱く。1987年国立公文書館に転じ国際交流を担当。1989年CA取得。1993年国際資料研究所を設立。全国歴史資料保存利用機関連絡協議会副会長、記録管理学会副会長、ICA/SPA(国際文書館評議会専門家団体部会)運営委員(2000-2008)など。東京大学大学院、東京芸術大学、中央大学、学習院大学講師。著書『電子記録のアーカイビング』(2003)、『世界の文書館』(2000)(以上単著)、『デジタル時代のアーカイブ』(近刊予定)、『世界のアーキビスト』(2008)、『アーカイブを学ぶ』(2007)、『アーカイブ事典』(2003)、『文書館用語集』(1997)、「文書基本法(案)と記録管理院構想」(高橋滋他編)『政策提言 公文書管理の法整備に向けて』、2007)(以上共著)など。
小出 いずみ(こいで・いずみ)
財団法人 渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター長
1980年から財団法人国際文化会館で日本研究の専門図書館を担当。学術研究における一次資料の重要性とその情報資源化の必要性を痛感し、アーカイブズと資料アクセスに関心をもつ。A Guide to Reference Books for Japanese Studies (International House of Japan, 1989. rev. ed. 1997)編纂、『研究と資料と情報を結ぶ』(国際交流基金、2002)など会議の企画と会議録を編纂。2001年からは、主としてアメリカやアジアを対象とした二国間、多国間の国際文化交流プログラムを担当。2003年11月から現職。1978年同志社大学大学院修士課程修了(組織神学専攻)、1980年ピッツバーグ大学大学院修士課程修了(図書館学専攻)、2008年東京大学大学院修士課程修了(文化資源学専攻)。現在、同大学院博士課程在学。

〈執筆者一覧〉
エリザベス・W・アドキンス(Elizabeth W. Adkins)
CA フォード自動車 グローバル情報管理部長 米国アーキビスト協会会長[2006-2007]
フィリップ・C・ブラウン(Philip C. Brown)
オハイオ州立大学歴史学部準教授
シェルドン・M・ガロン(Sheldon M. Garon)
プリンストン大学歴史学部教授
マーク・A・グリーン(Mark A. Greene)
CA ワイオミング大学 アメリカ文化遺産センター(AHC)所長 米国アーキビスト協会会長[2007-2008]
加藤陽子(Yoko Kato)
東京大学大学院人文社会系研究科准教授
古賀 崇(Takashi Koga)
国立情報学研究所 情報社会相関研究系 助教 総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻助教(兼任)
小檜山ルイ(Rui Kohiyama)
東京女子大学現代文化学部教授 お茶の水女子大学ジェンダー研究センター客員教授
小出いずみ(Izumi Koide)★
財団法人 渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター長
松崎裕子(Yuko Matsuzaki)
財団法人 渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター 企業史料プロジェクト担当
愛知学泉大学客員研究員
デイビッド・J・メンゲル(David J. Mengel)
米国国立公文書館記録管理庁(NARA) 特別閲覧・情報公開担当チーフ
牟田昌平(Shohei Muta)
国立公文書館アジア歴史資料センター 調整専門官
長岡智子(Tomoko Nagaoka)
国際基督教大学21 世紀COE プログラム コーディネーター
小川千代子(Chiyoko Ogawa)★
CA 国際資料研究所代表
大津留(北川)智恵子(Chieko Ohtsuru Kitagawa)
関西大学法学部教授
リチャード・ピアス= モーゼス(Richard Pearce-Moses)
CA アリゾナ州図書館公文書館 デジタル政府情報統括長 前米国アーキビスト協会会長[2005-2006]
トルディ・ハスカンプ・ピーターソン(Trudy HuskampPeterson)
CA 元米国国立公文書館記録管理庁長官代理。元米国アーキビスト協会会長 [1990-1991]
富永一也(Kazuya Tominaga)
財団法人沖縄県文化振興会(沖縄県公文書館指定管理者) 公文書管理部資料課 公文書主任専門員
ベッキー・ハグランド・タウジー(Becky HaglundTousey)
CA クラフト・フーズ社 グローバル・アーカイブズ部長
吉見俊哉(Shunya Yoshimi)
東京大学大学院情報学環長
まえがき:

 戦後60年を過ぎ、戦前期の記憶はおろか、戦後の記憶も薄れつつある。これを補う記録資料は今、どこにどのような状態で残されているのか、どのような利用提供体制が築かれているか、どうしたらアクセスできるのか? この疑問を軸に、日米の公文書館や歴史資料保存機関の専門家及び研究者が一堂に会し、3日間にわたる集中的な討論を行ったのが、2007年5月の日米アーカイブセミナーであった。本書は、このセミナーで発表されたペーパーと共に、主催者がセミナーを企画するにあたっての基本的な考え方を著し、1冊にまとめようとしたものである。

 セミナーの概略は次のようであった。日米の基調報告者から全体状況についての報告を聞いた。次に国レベル、地方自治体レベル、大学、企業という異なる組織の関係者に、これも日米から一人ずつの報告があった。さらにアクセスという観点から日本人で米国のアーカイブを利用する研究者、米国人で日本のアーカイブを利用する研究者二名ずつをお願いし、その経験について語ってもらった。こうすることで、日米を「タスキがけ」で比較検討することができるようにしたいと考えての企画であった。また3日間のセミナーの全体について、評価報告をお願いし、公開フォーラムの最後には提言の採択を行った。以上をふまえ、本書は提言と九章で編成した。

 第一章は、アーカイブの公共性をテーマとした、セミナーの二人の基調報告で構成した。ここでは、公共性とは利用されるからこそ担保されること、秘匿されたアーカイブには公共性は生じないことが強調されている。日米のアーカイブへのアクセス環境の差異がここで把握できるだろう。

 第二章は、「制度なくして利用なし」という事実を日本側、米国側の経験で浮き彫りにしている。牟田は、巷間に流布する「戦前の公文書は、保存されていない、整理されていない」という風評に反し、実際には日本の戦前公文書はかなりきちんと整理され、保存されてきていたという事実とその背景にある文書整理の制度を紹介した。また、メンゲルは、米国国立公文書館が提供するアーカイブへのアクセスが、いかに多くの法制を根拠に支えられているものかを丁寧に解説している。

 第三章では、地方政府のアーカイブ組織の問題を取り上げた。アーカイブの組織的な確立が、資料へのアクセスの基礎を形成することを、日米の事例がそれぞれに明らかにしている。富永は所属の沖縄県公文書館を事例として、「県」という組織の中における公文書館の役割、位置づけとそこで行われる業務を細かく論じ、ピアス=モーゼスはアーキビストが公開とプライバシー保護の両面の均衡をとる責任を負うことの難しさを述べながら、そこに法令準拠という柱を頼っていることを述べている。このなかで見えてくるのは、親組織とアーカイブの関係が確立したものでなければ、アーカイブ機関におけるアーカイブ資料へのアクセス提供は望めない、という単純な結論である。なお、ピアス=モーゼスはSAAアーカイブ用語集の著者であることを特に付言しておきたい。この用語集は本書編集にも非常に役に立った。

 第四章は、大学のアーカイブである。日本ではまださほど普及していない「大学アーカイブ」だが、その現実を東京大学ならびに同大学院情報学環を事例に吉見と小川の対談で描出する。グリーンは米国の大学アーカイブを機関アーカイブと収集アーカイブという切り口により整理した。日米ともに、大学という組織の中でアーカイブ資料へのアクセスを確実にするにはアーカイブ資料の所在把握とその適切な整理作業、複製作成が欠かせない。とりわけ現今、複製作成にデジタル化という方法が加わったことで、アーカイブには新たな世界が広がりつつあることが見えてくる。

 第五章は企業アーカイブの考察である。企業が保有するアーカイブ資料は、国や地方政府、大学のように、公開と利用提供が大前提にある、というものではない。ところがその社会的意義は企業自身が想定する以上に大きい。資料へのアクセスを考えるなら、保存しておかねばならない。つまり、保存はアクセスの始まりということは第五章の基調である。

 第六章では、日本人で米国のアーカイブ利用者である大津留、小檜山、米国人で日本のアーカイブ資料利用者であるガロン、ブラウンの四人が、それぞれの経験に基づいた知見を語る。日米のアーカイブ資料へのアクセス制度の違いが、利用者の視点で克明に語られているところは、注目したい。

 第七章は、日米アーカイブセミナーの全体を別の角度から検討する。古賀はセミナーで提出された問題について日米を比較しながら分析評価する。小出がまとめた質疑応答の記録では、日本人の知りたいアメリカの実践が披露される。さらに、長岡がイベントの準備と実施における情報・記録共有の諸側面について、本セミナーを事例として報告する。ここでは、情報共有が日米をつなぎ、アーカイブの保存、アクセス、公共性を高めることを確認した。

 第八章は、小出がアクセスを外交課題に位置づけた論文である。アクセスとは、個別具体的な資料閲覧だけに矮小化されるべきものではない。「アクセスできる」状況の有無が時に外交問題にもかかわる。日本が世界に誇る「デジタルアーカイブ」、アジア歴史資料センターの成立の背景に何があったのか、国際関係のなかでの資料アクセスがいかなる意味をもつかを論じた。

 第九章は小川のエッセイ「残すということ」である。残すことがアクセスの始まりであり、「残せる」ことのもつ意味を語る。残すことができるものは、資料を残す。残す力の強弱は、資料が残り続ける可能性にかかわる。一方、資料は保存されると、そこからアクセスの道が開ける(企業アーカイブ)。所在情報が明らかにされれば、より迅速で、より便利なアクセスが可能となる(大学アーカイブ)。アクセスのためには確立した専用の組織がほしい(地方アーカイブ)。そしてその組織を根拠づける制度がほしい(国のアーカイブ)。このように段階的に発展する希望と工夫が、歴史を紡ぎ、歴史をつくるアーカイブの存在を支える、というメッセージを汲んでいただきたい。

 そして、冒頭に掲出した「提言」は、公開フォーラムの最後に採択したものである。このセミナーの成果を確定し、今後何をどのように留意しつつアーカイブのアクセスについて考え、行動するべきかを考える指針であり、本書の骨格である。

 最後になったが、巻末執筆者一覧の中で、主に米国側執筆者の肩書に頻出したCAについて触れておきたい。これはCertified Archivist の略号で、米国公認アーキビスト・アカデミーが認定する公認アーキビストの資格を有することを意味する。知識・技能に関するペーパーテストの受験成績と、詳細な業績目録の書類審査を経て与えられる五年更新の専門家資格である。日本におけるアーキビスト資格制度の整備が期待される現今、参考としたい有力な先行事例として注目しておきたい。

 以上、本書の構成のあらましを述べた。ここに至るまでの長い道のりをともに歩み、いつも励ましてくださった小出いずみ氏、セミナー事務局として八面六臂の活躍をされた長岡智子氏、このお二人に引き合わせて下った末吉哲郎氏、本書の作成に至る長い時間をじっと静かに見守ってくださった日外アソシエーツ社長、大高利夫氏、山下浩編集局長、出版サイドから本書の編集に精力的かつ献身的に取り組んで下さった若林月子氏ほか多くのスタッフの皆様、吉見・小川対談書き起しの労をとってくださった東京大学大学院の加藤義人氏、そのほか多くの皆様にお世話になった。お名前を挙げられなかった方も含め、記してここにお礼申し上げます。

 2008年7月18日 湘南海岸にて

小川 千代子

目 次:
まえがき ◆小川 千代子
日米アーカイブセミナーの提言
第1章 アーカイブと公共性
歴史の教訓 ― 日本近代史における歴史の「誤用」について ◆加藤 陽子
アメリカ合衆国におけるアーカイブの姿勢とアクセス ◆トルディ・ハスカンプ・ピーターソン
第2章 アクセスの枠組み
戦前の公文書にかかわる神話と現実 ◆牟田 昌平
NARAにおける米国政府記録へのアクセス ◆デイビッド・J・メンゲル
第3章 アーカイブの設置
決定的な不在 ― アーカイブス戦略についての異見 ◆富永 一也
板挟み ― 米国における州政府記録へのアクセス ◆リチャード・ピアス=モーゼス
第4章 アーカイブ資料の共有化
大学アーカイブの現実 ― 東京大学大学院情報学環を事例に ◆吉見 俊哉・小川 千代子 対談
米国の大学における機関アーカイブ及び手稿資料コレクションへのアクセス ◆マーク・A・グリーン
第5章 アーカイブ資料の保存
日本の企業史料 ― その概観とアクセス ◆松崎 裕子
ビジネス・アーカイブへのアクセス ― 米国の場合 ◆ベッキー・ハグランド・タウジー
◆エリザベス・W・アドキンス
第6章 アーカイブのアクセス―利用者の経験
日本のアーカイブへのアクセス ― 日本史近現代史研究者の視点 ◆シェルドン・ガロン
利用者から見た日本の文書館資料へのアクセス ◆フィリップ・ブラウン
アメリカの公的文書館史料を利用する立場から ◆大津留(北川)智恵子
アメリカのアーカイブスへのアクセス ― 教会の資料の場合 ◆小檜山 ルイ
第7章 日米をつなぐアーカイブ
日米のアクセスを比較して ◆古賀 崇
アメリカのアーカイブ ― 日本からの質問 ◆まとめ 小出 いずみ
国際会議の記録実務―日米アーカイブセミナーの運営と記録整理の事例◆長岡智子
第8章 国際関係の中のアーカイブ
外交問題と資料アクセス ― アジア歴史資料センターの成立過程 ◆小出 いずみ
第9章 歴史をつむぎ、歴史をつくるアーカイブ
だれのため、何のためのアーカイブか ― 残すということ ◆小川 千代子
あとがき
付録(巻末より)
執筆者一覧
日米アーカイブセミナー実行委員会名簿
日米アーカイブセミナー JAPAN-US Archive Seminar 全体プログラム
英文提言
事項名索引


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