30年におよぶ編者渾身の調査結果―現代に甦る江戸期勧進相撲、伝統の記録
史料集成 江戸時代相撲名鑑

飯田昭一編 B5上製・2分冊(分売不可)
セット定価(本体70,000円+税) ISBN978-4-8169-1647-2 2001年9月刊

日本図書館協会選定図書

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寛永元年(1624)〜慶応4年(1868)の240年間を対象に、江戸・京都・大阪で活躍した力士や行司2万人余を収録。現存の古番付や相撲に関する書物、大名家の史料等を精査、集成しました。名横綱はもちろん、無名の幕下力士の記録までも網羅。江戸期の風俗・文化研究の資料としても便利です。
編者・飯田昭一氏の30年におよぶ史料の収集や調査については、「日本経済新聞」(2000.3.7)や「NATIONAL GEOGRAPHIC」(2000.6)で紹介されました。

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史料集成 江戸時代相撲名鑑 写真

古番付から浮かび上がる東西二万人の力士たち
 「一段違えば虫ケラ同然」と言われた時代である。その悲惨な状況は現代の我々には想像も出来ないが、よい親方につき、また出世して殿様の抱え力士にでもなれば、一年を十日で過ごす良い男といわれる身分にもなれた時代でもあった。そのような相撲社会で、上を目指して、豊かな暮らしを夢見て、必死に生きていた力士たちが数多くいた。しかし、彼らの中で今日私たちの目にすることが出来るのは、古文献や相撲書などで取り上げられる極く限られた知名度のある上位力士だけである。下位力士の経歴となると記録は皆無に等しく、唯一古番付の中にその存在を見つけるのみである。
 それぞれの番付を見るとその場所で各力士がどの地位にあったかを知る事が出来る。しかし、ある力士の経歴を辿ろうとするとこれは容易な事ではない。『江戸時代相撲名鑑』は相撲に関する単なる歴史書ではない。編者の飯田昭一氏が30年の年月をかけて5百余枚の古番付、古文書類のあちらこちらに残されている力士の足跡の断片(=点)を丹念に拾い集め、各力士ごと、時代順(=線)に纏め直した江戸相撲の一大“史料集成”だと言えるだろう。江戸だけでなく上方(京都、大坂)で活躍した力士たちも含め、上位下位に関係なく名横綱、名大関はもとより序の口、前相撲クラスの番付最下層の力士たちまでその名を記録にとどめることを目指してこつこつと続けられてきた仕事の成果なのである。
 ところで、勧進相撲の始まりはいつなのか、江戸か京都かどちらが先なのか、ということについては諸説があってはっきりとしていないが、勧進相撲の番付が発行されたのは元禄年間頃からと言われている。『名鑑』には正徳四年の京都番付から明治元年の江戸番付までの「江戸番付」「京都番付」「大坂番付」「巡業番付」などによる各力士のその時々の番付の位置が記されているが、江戸番付と上方番付とでは力量が同じではないので単純に江戸の二段目と上方の二段目とは比較出来ない。力士の力量は元禄から享保位までは関西の方が上だったようだが、番付に格差がつくようになって後になるに従い江戸の方が上になったようだ。なにしろ交通機関もない時代のこと江戸から京都大坂に行き来する力士たちもさぞや大変だったことだろう。『名鑑』を作り始めたきっかけと30年の苦労話を編者に聞いてみた。
  「昭和45年頃、或る古書店の販売会で偶然一枚の古番付を手に入れたのがキッカケとなり、その会場で相撲関係の古本屋の店主に出会ったことが、この道にのめり込む最初でした。元々懐古趣味があるところへこの人との出会いが、火をつける結果となりました。毎日のようにその古本屋に通って、ありとあらゆる古い文献や古番付を買いあさり、集まった資料を検討している時に、各力士の経歴を書いて見ようと思い立ったのでした。書いてゆくうちに、ただ名前だけ書くのでは物足りない感じで、それを力士別に集めると云う作業を始めましたが、これが大変なことになりました。なにしろ力士数が多く、番付ごとにその力士の所に書き込んで行くので、瞬く間にレター用紙の山が出来ました。細かい字で数千枚となりました。気がつけば既に五年の歳月が流れていました。これからが又大変でした。アイウエオ順に力士名を並べながら、四百字詰め原稿用紙に力士の経歴を筆書きしていったのでした。原稿用紙で一万五千枚にもなり、積めば1米五十にもなる量でした。・・・・」
 この史料集成がのちの研究者に少しでも役に立てればというのが今の飯田氏の願いである。
(日外アソシエーツ編集局 山下 浩)

「ウィークリー出版情報」10月1週号より転載



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