〜第7回 図書館サポートフォーラム賞受賞〜

京藤 松子 氏

(元アメリカンセンター資料室司書)

京藤松子氏 【アメリカンセンター資料室ウェブサイト】
【受賞理由】
米国ルイジアナ州立大学大学院図書館情報学修士課程修了。エール大学図書館東洋部に勤務し、日本研究・日米関係分野の研究者の研究支援に努めた後、帰国。1972年より米国政府機関であるアメリカンセンター資料室に33年間勤務、このたび退職した。その間、米国政府関係の日本国内への情報提供をはじめ最新の情報技術に関する情報提供、図書館情報学の学生・教師をはじめ日本人研究者の渡米準備への指導助言、「誰のための図書館」の翻訳出版、さらには日本の専門図書館協議会と米国 Special Libraries Association との強力なパートナーシップの確立に尽力するなど館界に多彩な貢献をした。今後の更なる活躍が期待される。
【受賞のことば】
 先ほど表彰委員長からお話がありましたように、私もすばらしいものを頂戴してここに立ちながら、いまだになぜ表彰されるのかわからなく、今年1月31日付けでアメリカンセンターを33年近く働いて定年になった、ただそれだけじゃないかと思っているわけです。したがってお話しすることは何もないのですが……。
 アメリカンセンターといいますのは、アメリカの連邦政府がマッカーサーの頃から日本に開設してきた図書館の延長でして、もう60年近くもやっているのですが、その後半の33年間――1972年から私が勤めさせていただいたわけです。マッカーサーの頃は日本の戦後で、その援助と処理の一環としてアメリカ政府が図書館を開いたのですが――プロパギャンダ的なニュアンスがないこともなかったのですけれども、立派なのはきちんと本国の図書館員を雇って、学者もアドバイザーに起用して、日本の事情も勉強し、私のような(その当時はまだ居ませんでしたが)現地雇いの職員をきちんとトレーニングして情報の提供をしたことです。私も72年以降この図書館で一生懸命働いたのですが、何と言っても留学時代にいろいろとアメリカにお世話になったものですから、その恩返しのつもりもあったのです。
80年代半ば頃までは、アメリカンセンターの使命の一つにアメリカの最新の情報サービスのあり方や方法をデモンストレーションするということがありました。資料を購入したら保管するだけではなく必ず提供・活用しなければならない、そういう図書館を実践するという使命が私どもに課せられていました。もう一つの使命は、この方が重要なのですけれども、アメリカが日本だけではなく世界の百数十カ国に同じような情報サービスをしている目的は、それぞれの国と相互理解を深めて平和維持を保ち戦争にならないようにするということです。
 これらの使命は私がアメリカンセンターで図書館員として働いている間中いつも糧にしておりました。予算が縮小されたり、京都や札幌のアメリカンセンターがクローズされたり、東京のアメリカンセンターでも図書館員が7人から4人に減らされたりした時、あるいはコンピュータ化や新しいウェブサービスを立ち上げたりする時は常に闘う必要があったのですが、そんな時はいつもこの図書館の使命は何なのか、いかに与えられた使命が重要であるかを考えました。スタッフとも何度も使命を考えそれを基に予算の問題などで上部と掛け合ってきたのです。相互理解を深め平和維持をするためにコミュニケーションが大事であり、そのためにきちんとした専門図書館員による情報サービスがいかに必用であるかが強い糧でありました。
 いま私は退職しましたが、図書館を運営している時にいつも戻り強い糧となった自分の図書館の使命、それをこれからもう一度勉強してみたいなと思っております。アメリカンセンターの使命は”パブリックディプロマシー”といわれるものですが、現在起こっている中国の半日感情(アメリカに対してはイラクでの反米感情もあります)に対して、情報をいかにフェアーにきちんと提供していくかが非常に大事なことだと思います。で、たまたま昨年設立された東京大学公共政策大学院でのゼミを受ける機会を与えられましたので、これから私がアメリカンセンター図書館の運営の糧とした米国の情報政策すなわち”パブリックディプロマシー”を勉強しなおして、ゆくゆくはきちんとした形でまとめられればと思っております。
 本日は大変ありがとうございました。
受賞者(菊池氏・京藤氏・小林氏) 受賞者をかこんで

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