田川浩之 氏(金沢文圃閣 代表) 受賞のことば


田川浩之氏 このたびは裏日本の出版社である私ども金沢文圃閣を表彰いただきまことにありがとうございます。

 ご推薦の通り近代書誌・書物学の文圃文献類従シリーズ、天野敬太郎『雑誌新聞文献事典』『日本書誌の書誌−社会科学編(主題編3)』、藤野幸雄・寛之(父子)訳図書館学古典翻訳セレクション1〜7、年刊雑誌『文献探索人』・個人選集『文献探索人叢書』などを刊行してまいりました。

 出版事業には、誠に厳しいものがありますが、このたびの表彰を大きな契機に一層努力を重ねて参る所存でございます。ご推薦に重ねて御礼申し上げる次第です。

 1999年9月に金沢文圃閣は創業し、初めての出版物として『雑誌新聞文献事典』を刊行しました。それは同時にいまだ成立が困難な近代書誌学の基礎形成に寄与することを目指した資料集・文圃文献類従シリーズのはじまりでもありました。刊行趣意は次のようなものです。全文です。


 「パソコン・インターネットによるデジタル検索は、確かに調査の手間を省力化することに多大な力を持っています。

 しかしいま現在、ネットデジタル検索に「のっかってこない・ひっかからない」書誌情報も当然のように存在しています。

 それらを調べることは、いよいよ今後困難になっていくかも知れません。また増え続けていく膨大な情報の中から、自分にとって必要な情報をいかにセレクトしてくるかという技術も、ますますこれからの日常生活において必要とされてくるのではないでしょうか。

 そのような際の参照すべき原点として、私たちは近代を対象とする書誌・情報学の成果をもっています。

 それらは「埋もれた」ままで活用・継承されているとは言い難いのがおそらく現状であり、それを継承しデジタル情報検索のこれからに生かしていくことが金沢文圃閣の願いです。」


深井人詩氏 あれから十七年、金沢文圃閣は近代書誌学の基礎形成に寄与するためにいまだ必死になっているという状況です。はたからご覧になれば心身を酷使してとても哀れに見えていることかと思います。このような表彰を受ける方は、ある程度余裕をもった状況にいらっしゃることが通常かと存じますが、金沢文圃閣におきましてはほど遠い現状です。出版企画にも本作りにも販売営業にもまだまだ至らぬ点多く、日々懊悩です。

 いまだ途半ばのこのような小閣に、今回の表彰を与えてくださった図書館サポートフォーラム事業にあたられている皆様方の度量の深さにあらためて感謝申し上げ、今後もなお悩み考えながら活動を継続いたします。

 (下の写真は代理出席の深井人詩氏〔第3回LSF賞受賞者〕)