表彰講評 水谷長志 氏(表彰委員会委員長) ※校務欠席のため、松下鈞表彰委員代読


 図書館サポートフォーラムの表彰委員長をしております跡見学園女子大学の水谷と申します。よろしくお願いいたします。

 早速ですが、第21回図書館サポートフォーラム賞の表彰結果について、ご報告いたします。

 今回は、図書館サポートフォーラムの会員および事務局より、個人2名の表彰候補が推薦されました。

 この数は昨年以前から比べますと、きわめて少ないのでありますが、これが図書館界の現状と何かしら関係があるのか、即断することは適当ではありませんでしょうし、たまたまの事態として受け入れ、推薦候補が本図書館サポートフォーラム賞に真にふさわしいのかのみを厳正に審査いたしました。

 審査は3月11日、大森の日外アソシエーツにおいて10名の出席幹事による投票および3名の不在幹事の通信投票によることとなりました。出席・不在のあわせて13名の幹事による投票が行われました。その結果は、すなわち、この度の第21回図書館サポートフォーラム賞は、推薦の個人2件、いずれも図書館サポートフォーラム賞にふさわしいご業績としてお二人様が受賞されることになりました。

 では、五十音の順に第21回図書館サポートフォーラム賞の表彰理由について述べさせていただきます。


 まず、最初に個人表彰として太田浩市様の表彰理由を読み上げます。


 ○太田 浩市〔八王子市中央図書館館長〕

  太田浩市氏は平成16年に八王子市が策定した「八王子市生涯読書活動推進計画」に図書館職員として深く関与され、また平成29年度には八王子市中央図書館長として、特に高齢者の図書館利用、ひいては生き甲斐の向上と高齢者自らの研究活動意欲の高まりを強く支援されました。その意図をもって、さらに八王子の郷土の誇りである「千人同心」にちなむ「八王子千人塾」の開設にも注力されたことは、生涯学習や地域振興の拠点としての公共図書館の使命と進むべき姿をあざやかに示す活動であり、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。


 現在の公共図書館はともすれば高齢者のリトリート、隠居所。隠れ家。避難所。に見えがちですが、それを、「八王子千人塾」をもって見事に裏切り、括目すべき地域振興拠点に書き換えた手腕には、今後の公共図書館の望ましい方向を示していただいたように思われてなりません。その裏では多くの時間の傾注とご努力があったかと思われますが、これから、第二、第三の千人塾が誕生する日も近いのではないでしょうか。


 次いで、同じく個人表彰の川村敬一様の表彰理由を読み上げます。


 ○川村 敬一〔元・獨協医科大学図書館/同越谷病院図書室〕

  川村敬一氏は永く医学図書館員として業務を遂行されつつ、「分類」および「索引」という知識情報の組織化に必須の課題に取り組まれ、多くの関連専門誌に論考を発表されて、その知見を紹介されるだけでなく、当該領域の研究意義の理解促進に貢献された。また、ユネスコと国際情報ドキュメンテーション連盟が共同開発した変換言語BSO(Broad System of Ordering:広範配列体系)の事業に1995年から編集顧問として参与し、2011年にはBSOに関する英文書誌をアリゾナ大学から刊行された。内外における同氏の業績は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。


 私にとっての川村様のご著作『サブジェクト・インディケーション』(日外アソシエーツ、1988)は、トライしてもトライしても通読のできなかった大きな壁でした。さらにBSOへ進まれたご研究の全貌を把握することは、私には、到底できませんが、そのお仕事、特に国際的文脈で編まれたBSO―Broad System of Ordering: An International Bibliography. University of Arizona, 2011. の刊行の意義においては、深い尊敬の念を抱くものであります。資料によれば、川村様の図書館短期大学の別科特別研究の修了論文は、故小野泰博先生のご指導のもと、「ガブリエル・ノーデ年代記―17世紀フランスにおける司書兼秘書の生涯と学術通信網の形成」であったとのことでして、ノーデとBSOをつなぐ糸、個人的変遷史について、是非、回顧的一文を草していただきたいと願うものであります。


 第21回を迎える図書館サポートフォーラム賞も、この賞の三つの柱にかなって、長年の研鑽と国際性、そして図書館のあることの意義の発露顕現をよく示すお二方に受賞いただきました。今回、例年になく推薦件数は少なかったのではありますが、まことに力の入ったお二人のご業績において受賞者を得ましたこと、表彰委員長として、ことのほか嬉しく思っております。

 以上をもちまして、簡単ではございますが、今回の図書館サポートフォーラム賞の表彰者のご紹介とさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。