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第19回図書館サポートフォーラム賞受賞者(2017/4/17授賞式)

icon 水谷長志 表彰委員長講評

銀鱗文庫
 銀鱗文庫銀鱗文庫は東京都中央卸売市場「築地市場」の水産仲卸の文化団体「NPO法人築地魚市場銀鱗会」の前身、1951年に誕生した「築地魚市場銀鱗会」が創立10周年の記念事業として開館、5年前から一般への閲覧も始めた。当初は、市場の人の余暇や教養を高めるための図書が中心だったが、2010年より、市場ならではの専門的な図書館に方向転換。水産の統計や年鑑ほかの専門書、日本橋魚河岸や築地市場開場時などの印刷物など、「築地市場の存在証明」に類する資料収集にも精力を傾けており、平成28年度は、1950年代に始まる業界新聞のデジタル化を進めて、築地文化を未来へつなぐ活動を行っている。こうした資料を目的に、水産関係者のみならず、大学生ほか多くの研究者が訪れており、この貴重な文庫を生き残らせることもまた日本の、東京の文化指標を示すものであると言えるだろう。このユニークな公開専門図書館である「銀鱗文庫」の事業は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。

 受賞の言葉 


公益財団法人 渋沢栄一記念財団情報資源センター
 渋沢栄一記念財団情報資源センター公益財団法人 渋沢栄一記念財団情報資源センターは、昨年の2016年11月11日、『渋沢栄一伝記資料』全68巻のデジタル化プロジェクトにおいて、本編58巻のうち索引巻である第58巻を除く57巻、約4万ページをインターネットへ公開した。本伝記資料が日本近代史、経済史研究に資することは言うまでもないが、本資料の公開に当たって仕込まれた、データ構成、検索システム、ユーザー・インストラクションなどの多面的で周到かつ、合理・合目的な設計は、数多あるデジタルアーカイブの中でも秀逸さにおいて際立っている。以後の史資料の公開に際して、モデルとなる事例を構築された貴センターの本事業は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。

 受賞の言葉 


雪嶋 宏一氏(早稲田大学教育・総合科学学術院教)
 雪嶋宏一氏雪嶋宏一氏は1978年に早稲田大学に司書職として入職後、深井人詩氏の薫陶のもと、1995年の『本邦所在インキュナブラ目録』(IJL)を皮切りに、西洋書誌学、とりわけ揺籃期本について全国調査に基づいて研究を推し進め、日本における西洋書誌学のレベルを大きく向上させた。教職に転じた後は、16世紀印刷本にフィールドを広げ、ヴェネツィア印刷界の巨人アルド・マヌーツィオ、『万有書誌』のコンラート・ゲスナーなど書物史に登場する巨匠的人物の研究においても多彩な業績を築かれている。揺籃期本については、2004年にIJLを改訂増補するIncunabula in Japanese libraries(IJL2)を刊行している。これらの一連の研究は、日本の学術図書館における西洋貴重書の保存と継承に多大の功績をもたらすものであり、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。

 受賞の言葉 


渡辺 美好氏(元・国士舘大学図書館職員|元・同大学非常勤講師)
 渡辺美好氏図書館サポートフォーラム賞の受賞者の中には、これまで図書館員でありつつ書誌作成に本務以外の個人の時間を傾注して止まないbibliographer、書誌の人は少なくない。18回の手代木俊一氏はキリスト教礼拝音楽の、16回の太田泰弘氏は食文化の主題書誌において、14回の金沢幾子氏は福田徳三の、11回の大森一彦氏は寺田寅彦の個人書誌においての功績を評価してのものであったが、今回の渡辺美好氏も吉田松陰書誌に代表される個人書誌において大きな成果を挙げられた。特に個人書誌を「データによる伝記」と把え、対象人物像に迫り、その人間観、歴史観の理解を促す創意工夫のある書誌の作成は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。

 受賞の言葉 

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